不動産を取引する際には、通常、売主・買主双方と不動産仲介会社が立会って不動産売買契約の手続きをおこないます。
しかし、さまざまなやむを得ない事情から、契約手続きに立会いができない場合、代理人を選任することで、不動産の契約手続きを所有者本人に代わって、代理人が行うことがあります。代理人に依頼する場合の委任の手続きの流れと、注意すべき内容を中心に解説していきます。
この記事を書いた人
名前:くろちゃん(宅建士)
金融業、住宅営業から不動産業へ。
不動産屋を開店させるために奮闘中!!
不動産の売却手続きは本人じゃなくてもいいの?
そうなんだよ!
やむを得ない事情がある場合には、代理人が売却手続きをおこなうことがあるよ。
不動産の売買契約を代理人に委任するのはどんなとき?
不動産の取引の際には、原則として不動産の所有者である売主と買主双方のご本人の立ち会いが必要です。
しかし、どうしても所有者本人の立会いができないような、やむを得ない事情がある場合には、代理人を選任し、その代理人が売却手続きをおこなうことがあります。
所有者本人が第三者に代理権を付与し、その代理人が不動産売買契約を締結するケースとしては、次のような場合があります。
取引をおこなう不動産が遠方の場合
取引をおこなう不動産が遠方にある場合や、不動産の所有者が海外に在住している場合などで、不動産売買契約時の立ち合いのスケジュール調整が難しい状況や所有者が高齢により移動が難しいなどの場合には、あらかじめ代理人を選任し、委任をおこなうことで、売却手続きを進めることがあります。
契約のために時間を作ることが難しい場合
不動産取引の手続きが完了するまでには、打ち合わせや色々な手続きなど、なにかと時間や労力がかかります。
仕事上、はずせない事情がある場合や入院・療養中の方など、契約手続きのために時間を作ることが難しい場合にも、代理人を選任し、委任をおこなうことで、売却手続きを進めることもあります。
契約手続きに不安がある場合
複雑な案件の不動産取引などで、契約手続きに不安がある場合には、稀ではありますが、不動産取引に詳しい親族や、弁護士や司法書士などの専門家を代理人に選任し、売却手続きを進めることもあります。
共有持分となっている不動産の売却の場合
遺産相続などにより複数人の所有者がいる不動産の売却の場合においても、契約手続きや残金決済・引渡し時には、当然に所有者全員が立ち会わなければいけません。
しかし、現実的に全員が集まることは、所有者の人数が多くなればなるほど予定の調整が難しくなるのではなりますよね。
そのような場合には、相続人の代表者を代理人とすることで、売却手続き時に所有者全員の立ち会いを不要とすることも可能となります。
また、離婚にともなう夫婦共有の不動産売却の場合にも、代理人を選任することで、元配偶者と顔を合わせることなく売却手続きを進めることが可能となります。
代理人を選任するためには代理権委任状が必要
代理人に不動産の売却手続きを依頼する場合には、代理権委任状が必要となります。
この委任状の存在によって、代理人が不動産売買契約における代理権を持つことの証明が可能となります。
また、委任状は、代理人による不動産売買契約における委任をおこなう範囲を明確に規定するという役割も持っています。
なお、不動産売買契約における代理人とは、前述のご事情などで所有者本人が契約手続きができない場合に委任状によって、第三者に代理権を付与する任意代理人が多くありますが、未成年者や成年被後見人が所有する不動産などの場合には、代理人の発生根拠が法律の規定に基づく法定代理人ということもあるんですよ。
委任状の記載内容
委任状の記載内容には、法的に定められているフォーマットはありませんが、所有者本人の意向のとおりに売却手続きを進めるためには、どの範囲までを代理人に権限を委任するかについて明確にしておかないといけません。
そのため、委任状には、代理人を選任する事のほかにも委任の範囲についても詳細な取決めが必要となります。
委任状に記載する項目
委任状には委任する内容を明確にするために以下の項目などを記載します。
- 土地の表示項目(所在、地番、地目、地積など)
- 建物の表示項目(所在、家屋番号、種類、構造、床面積など)
- 委任の範囲(媒介委託に関する権限、不動産売買契約の締結に関する権限、手付金や売買代金の受領等に関する権限、引渡しに関する権限など)
- 代理人の住所氏名の表示
- 委任者(所有者本人)の住所氏名の署名・押印(実印)
- 書面日付 など
委任状と合わせて売却手続きに必要な書類
代理人に売却手続きを委任する場合には、委任状のほか次の公的書類などが必要となります。
- 委任者(所有者本人)の印鑑証明書(3か月以内のもの)・実印、住民票
- 代理人の印鑑証明書(3か月以内のもの)・実印
- 代理人の本人確認書類(運転免許証などの写真付き身分証明書) など
委任状の内容について確認すべきこと
不動産売買契約における委任状の作成は、一般的に委任者(所有者本人)の意向を確認した上で、不動産仲介会社が準備をします。
しかし、委任状に署名捺印をおこなう前には、記載事項や委任の範囲などの内容に相違がないかどうか、ご自身で再度確認をする必要があります。
不動産売買契約の手続き後、記載内容に誤りがあることに気づいたとしても、委任状に基づいておこなわれた契約行為は委任者(所有者本人)ご本人が契約をおこなった場合と同じ効力をもつため注意が必要です。
では、委任状の内容について、次の項目を重点的に確認してみましょう。
登記事項証明書や登記済権利証と相違がないか
売却をおこなう不動産の表示項目について、登記事項証明書や登記済権利証と相違がないか確認をしましょう。
委任する内容に相違がないか
代理人に委任する範囲が明確になっているかをまず確認します。
第三者が見ても内容がすぐに理解できるかどうか、また、曖昧な部分がないかどうかもあわせて確認しましょう。
文末には「以上」と記載されているか
第三者による委任状への追記を防止するため、委任状の最後は「以上」と締めくくられているかについても確認をおこないましょう。
白紙委任をしていないか
委任状の項目が空欄になっているものを、一般的に白紙委任状といいます。
不動産仲介会社を通しての不動産売買契約の場合には、通常、白紙委任状で契約行為をおこなうことはありませんが、白紙委任状は、委任の範囲を定めていないため、のちにトラブルの原因となる可能性がありますので、空欄項目がないか念のため確認をしましょう。
不動産の売却手続きを代理人に委任する場合の注意点
代理人に不動産売却の手続きを委任する場合には、次の内容についても注意しましょう。
信頼のおける人物を選ぶ
不動産売買は高額な取引であるだけでなく、代理人の行為は、法的に委任者(所有者本人)がおこなった契約行為と同じ効力を持ちます。
そのため、代理人の選任にあたっては、細心の注意が必要です。
任意代理人を選任する場合には、特に法的な基準や条件は定められていませんが、基本的には親族や専門家(弁護士、司法書士)などの信頼のおける人物から選定することがよいでしょう。
代理人との連絡手段を確保しておく
代理人は、委任状に記載されている内容(権限)についてのみ、委任者に代わって手続きをおこなうことができます。
もし、委任状での取決めを超える範囲の事項が発生した場合には、その都度、代理人は委任者(所有者本人)に確認をとらなければいけません。
そのような場合に備え、代理人とはすぐに連絡がつく手段を確保しておきましょう。
まとめ
不動産の取引をおこなう際、売主・買主双方と不動産仲介会社が立会って不動産売買契約の締結をおこなうことが原則となります。
しかし、複数人の所有者がいる相続不動産の不動産取引の場合や不動産売買手続きのスケジュール調整が難しい場合など、さまざまなやむを得ないご事情もあると思います。
そのような代理人を選定しなければならないと想定される場合には、スムーズに取引を進めるためにもまずは、信頼できる不動産仲介会社へ相談をすることからはじめてみましょう。
どうしても本人が手続きができない時には、
先ずは信頼できる不動産屋さんに相談してみることだね!
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