不動産売買契約が成立した際には、買主が売主へ「手付金」を支払うことが必要となります。
手付金は、契約成立の証拠金としての意味をもっていますが、手付金の種類によっては、性質がそれぞれ違いますので、正確に理解しておくといいですね。
今回は、不動産売買契約における「手付金」の意味合いや必要性について解説します。
この記事を書いた人
名前:くろちゃん(宅建士)
金融業、住宅営業から不動産業へ。
不動産屋を開店させるために奮闘中!!
不動産売買の時の「手付金」てなに?
「手付金」には4つの種類があるんだよ。
順番に説明していくね。
手付金とは
不動産物件の売買契約に際して、買主から売主に支払うお金のことです。契約成立の証拠として意味合いがあるのと、万が一契約が解除された場合の担保ともいえます。また、買主と売主双方が勝手に契約をキャンセルしないための保証の役割を果たします。手付金とは契約金と同じような言葉で使われますね。
手付金の4つの種類
解約手付
契約当事者が契約の履行に着手するまでは、契約の解除権を留保し、契約を解除する際、買主の場合は、手付金を放棄する(手付流し)することで、また、売主の場合は、手付金を買主に倍返しする(手付倍返し)することで契約の解除ができるとした性質の手付のことをいいます。
違約手付
契約当事者に契約違反(債務不履行)があった場合に、損害賠償とは別に違約罰として没収できるとした性質の手付のことをいいます。
証約手付
契約の成立を証明するために交付される手付のことをいいます。
損害賠償の予定を兼ねる手付
契約当事者に契約違反(債務不履行)があった場合に、予定された損害賠償として、手付金を没収または、倍額を支払うとした性質の手付のことをいいます。
不動産売買契約における手付金とは?
手付金のそれぞれの性質をみてきましたが、不動産売買契約における手付金は、「解約手付」であると解されています。
不動産売買契約においては、不動産の売買契約時に買主が売主へ手付金を支払うことが、契約の成立要件の一つとされており、売主は、不動産を引渡す、買主は、売買代金を支払うとした契約の合意を当事者双方が簡単に契約を解除できないよう取り決められています。しかし、やむを得ず不動産売買契約を解除する場合には、ペナルティとして手付金額を相手方に支払うことで契約の解除が可能となっています。
契約解除の手続きとは
不動産売買契約を解除しようとする場合には、契約の相手方が「契約の履行に着手するまで」や「手付解除期日まで」の間に、互いに書面により通知をすることが必要となっています。
契約解除の事由については、どのような理由であったとしても契約の解除は可能となりますが、買主からの申出の場合は、売主に支払った手付金を放棄することで、売主からの申出の場合には、買主より受領した手付金の返還+手付金の同額(手付倍返し)をペナルティとして支払う必要性がでてきます。
契約解除の期限について
前述のとおり不動産売買契約の場合、契約の相手方が「契約の履行に着手するまで」であれば、買主の手付金の放棄、または、売主の手付金の倍返しによって契約を解除することができるとされていますが、「契約の履行に着手」とはいつが期限となるのでしょうか?
「契約の履行に着手する」とは、判例では、「客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または、履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す」と説明されています。
しかし、同内容では契約の解除ができる期限(手付解除期日)としては不明確ですし、売主、買主双方で解釈に相違が出てしまうことも考えられます。
そこで、個人間の不動産売買契約においては、「契約の履行に着手するまで」に対する特約事項として、具体的な手付解除期日を○月○日までと双方合意のもと取り決めることで、
それまでの期限であれば、手付金による契約解除ができるとすることが一般的となっているのです。
住宅ローンの融資利用特約による契約解除の場合では??
不動産売買契約においては、買主が住宅ローンを利用し購入することが多く、住宅ローンの利用を前提とした不動産取引の場合には、不動産売買契約書に住宅ローンの融資利用特約(融資特約)を設定することが一般的となっています。
同特約では、不動産売買契約書に買主が申込む金融機関・融資金額・融資承認取得期日などを詳細に取り決め、万が一、予定していた金融機関から規定の融資が受けられなかった場合には、契約の解除を可能とした特約となっているのです。
これは、買主を保護する目的で定められている特約となっており、同特約により契約解除となった場合には、手付解除は適用されず、売主は買主に手付金を返還する必要性がでてきます。
しかし、融資申込の際の書類不備など買主側に責任がある場合には、同特約の対象外となります。
さらに、実際に融資を申し込まなかった場合や、金利などの融資条件を理由に金融機関の借り入れを拒否した場合も、当然ながら同特約の対象外となります。
したがって、このようなケースに該当する場合には、不動産売買契約書に定める手付解除などの諸規定によって契約解除をおこなうこととなります。
手付金の金額
手付金の金額は、取引対象となる不動産の売買代金によっても異なりますが、概ね不動産売買代金全額の10%を目安に不動産売買契約書に取り決めることが一般的です。
しかし、手付金額の設定があまりにも低額となる場合には、容易に契約の解除が可能となり、結果として契約の効力を弱めることにもなりかねませんので、バランス感が必要となります。
なお、宅地建物取引業者が売主となる不動産売買契約の場合には、受領できる手付金の上限額が宅地建物取引業法によって規定されています。
手付金の支払い・清算方法
手付金の支払いは、不動産売買契約の成立時に、現金で買主から売主に支払うことが一般的となっています。
また、手付金は、本来売買代金とは異なる性質の金員となるため、残金決済時に、買主は、売買代金全額を支払い、売主は、買主へ手付金を返還することが原則であるとも考えられます。
しかし、このようなやり取りでは取引が煩雑となるため、実務上は、残金の決済時に買主が売主に支払った手付金を売買代金から差し引き、残りの売買代金を買主が売主に支払うことを不動産売買契約書に事前に取り決めることで、手付金を清算することが一般的となっています。
まとめ
不動産売買契約における手付金の重要性がお分かり頂けたかと思います。
不動産の取引においては、「手付金」のように普段から馴染みが少ない取決めがまだまだ多くあります。
それらは、金額の大きい不動産の売買を安心・安全に取引をするために定められた重要な規定となっています。
分からない時は、納得ができるまで不動産仲介会社に確認をしてみましょう。
不動産仲介会社は、売主・買主双方の利益を守ってくれる重要なパートナーであり、不動産売却を安心・安全に成功させるためには欠かせない存在となります。
「手付金」と言っても沢山種類があるんだよ。
分からないことはドンドン不動産屋さんに質問しよう!
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